市の決まりで、生活保護を受けていた祖母は大阪市内で最低限の葬儀しかできませんでした。
町内の小さな公民館を借りて、一枚の布団に祖母を寝かせ、その頭もとにひとつの木机。そこに線香を立て、子供達とその家族が見守るだけの本当に質素なお通夜でした。
でも、だからこそ食事の時もいらぬ気は遣いませんでした。
祖母の思いで話をしては笑い声を上げ、お酒に酔えば歌い、顔を撫でたり体を擦ったりして「いい人生やったなあ」と語りかけていました。
葬儀の時も、お経を読んでくれるお坊さんもなく、時間がきたら焼き場に向かうだけでしたが、涙よりも笑顔でいることが多く、祖母が亡くなったという悲壮感もなく、どちらかといえば温かく、皆が本当に心から祖母を送り出すという優しい気持ちに溢れていました。
本当に質素な通夜と葬儀でした。
けれど、本当に心のこもった家族葬でした。
自分もいつかは葬儀をされる身。
たったひとりの息子には、家族だけでいいよと言っています。